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あらすじ

女流画家・律子と暮らしはじめて3年――。
美大卒業を目前にしていた燕はある日、1本の電話を受ける。
相手は内定の決まった修復工房の所長で、
2週間ほど瀬戸内の小島へ研修に行ってくれないか、というものだった。
律子と遠く離れることに不安を抱きつつも瀬戸内海に浮かぶ小島・花之島を訪れる燕。
親の都合で島を出た少年、難病の画家の夫を持つ年の離れた美しい妻、
美術雑誌の新人編集者。そして老練の修復師・皆本。
人々との出会いを通じて、自分の過去と向き合う燕。
そして律子にもある変化が――。

挫折した絵に対する想いを取り戻して3年。
相変わらず律子のアトリエに住み続ける燕は、
将来のビジョンを見つけられないまま、美大の最終年を迎えていた。
ある日、燕はアルバイトを始めた音楽喫茶で音楽高校に通う桜と出会う。
挫折とトラウマからピアノが弾けなくなっていた彼女にかつての自分の姿を重ねた燕は、
彼女の仲間やそのその幼馴染、そして律子とともに、料理で寄り添っていくが――。

夢に挫折し、今を無気力に生きる美大生の燕は、
かつて一世を風靡した天才女流画家の律子に拾われ、生活の面倒を見てもらうことに……。
引き替えとなる条件は、美味しいご飯を作ること。
自分の過去や絵で挫けた事実を隠したい燕は、
言われるがままに美味しい食事を作り、律子と一緒に暮らし始める。
だが、そんな彼女にも隠している過去と秘密があるようで――。

キャラクター

  • 大島おおしま つばめ
    本編の主人公。夢に挫折し、今を無気力に生きる美大生。
    同じ美大出身の両親の期待に応えられず、勝手に休学したため、
    勘当同然で家出して放浪したところを律子と出会い、
    食事を作ることを条件に同居を始める。
    天才女流画家の律子に拾われたことで、
    彼の停滞していた時間が再び動き出す……。
  • 大林おおばやし 律子りつこ
    かつて一世を風靡した天才女流画家。
    「律子の黄色」と呼ばれる黄色を用いた作品は今でも伝説となっている。
    天才的なだけに絵以外のことは無頓着なため、生活力はほぼゼロ。
    日課の散歩がてら公園にスケッチに出たところで、燕と出会い、
    興味を持ち、行くアテのない燕を半ば強引に同居することを勧める。
    ただただ彼の作るご飯に感動する律子だが、
    そんな彼女にも隠している過去と秘密があるようで……。
  • 柏木かしわぎ ひかる
    律子が若い頃にやっていたアトリエの元教え子。 彼女のことが心配で生活面を陰ながら支えている。 銀座でギャラリーを経営しており、物腰はゆったりのジェントルマン。 だが、律子と同居し始めた燕には何故か当たりが強く、おかげで燕とは犬猿の仲。
  • 田中たなか あお
    燕の美大の友人。
    燕が一年留年したため先に卒業し、現在は美術雑誌の編集部で働いている。
  • 境川さかいがわ さくら
    ピアノを弾けなくなった音楽高校生。
    人見知りを直すため、幼馴染の夏生の両親が営む音楽喫茶カルテットキッチンでアルバイトをしている。 本人は覚えていないが、幼い頃に律子と出会っていたようで、その再会が新たな物語の序章となる。
  • 日向ひゅうが 夏生なつお
    幼馴染の桜と同じ音楽高校に通う、大人でもない自分に意味もなく苛立つ正常(?)な高校生。 桜のことをいつも気にかけている。
    カルテットキッチンでアルバイトをすることになった燕をなぜか敵視。
  • 加納かのう まこと
    花之島にある皆本修理工房へ入り浸る少年。
    修復師である皆本の一番弟子を自称し、研修に来た燕を弟弟子扱いして扱き使う。 燕には生意気な態度を見せるが、実は面倒見が良く島の子どもや大人たちからは頼りにされている。


キャラクターイメージ

キャラクターデザイン:丹地陽子

試し読み

レビュー

  • 修復の研修として四国の島へ訪れた燕。
    新たな出会いでようやく重かった扉が開かれる……。
    今作でも止まっていた時間を動き出させるゼンマイは出会い。
    そして日常で無自覚で頻出する檻を解き放つのは色と食。
    全ての鍵は日常の中に潜まれていたことを丁寧に紡がれていきます。
    そして全てが解き放たれた際に残されてた物が放つ彩はなんと眩い物か。
    秘められていた秘密さえも愛おしくも思えてしまうシリーズ大団円。

    レビュアー

  • 今回は修復師の師匠の元へ研修に訪れた燕くん。
    絵も人生も壊れたままでいいものなんて何もないですよね。
    絵の修復に携わりながら関わった人の心や人生まで修復していく様に感動しました。
    不安定だった燕くんも生活の拠り所になる場所ができていって安心しました。
    燕くんって絵とお料理で人と人との絆を繋げていく天性の才がありますね。
    これは彼の優しさが伝わってできたかけかえのないものです。
    特に律子さんとの愛情に満ちた繋がりは温かい気持ちにさせられます。
    美味しいお料理は彩りに溢れている、これはそっくり人生にも置き換えられるのではないでしょうか。
    彩りに溢れた人生を過ごすために人は何かを頑張って毎日生きるのかも。
    極彩色の食卓って素敵なタイトルだと思っていたんです。
    この巻でさらにその魅力を再認識しました。
    このお話にでてくるすべての人たちに彩りとお腹も心も満たす食卓を!!

    書店関係者

  • 絵と色と食事で紡がれた物語、極彩色で彩って完結です。
    この物語が始まったときから、描写の綺麗さが際立っていましたが、
    今回はさらに『文章が生きている』と感じるほどでした。
    少女が絵を描くときに、彼女の嬉しさやワクワク感がダイレクトに文章出てくる。
    読者として、読むテンポも、頭の中で読んでいる声色も、
    気づけば少しずつ弾んでいるような、そんな素敵な文章が作中で紡がれていました。
    だからこそ、そんな文章で描かれる、律子さんの隠していたことや燕が両親との向き合うこと、
    誠の覚悟、みんなの想いや決意がしっかりと伝わってきます。
    それぞれが出した結末・答えは明るく、あまりにも綺麗で、そしてしっかりと前を向けている。
    一巻からの燕の変化を見てきた人にとってはまさに『極彩色』と言えるような、
    これ以上にない最高の終わり方でした!
    本当に最初から最後まで綺麗で、頭の中で自然と色が描かれていくような、
    そんな素敵な作品でした。
    色鮮やかな物語をありがとうございました。

    レビュアー

  • その指が紡ぐ音は、光を奏で、色彩となり。そして新たな家族を描きだす。
    前作から少し時を経た二人と、新しく出会った友人たちとの物語。
    かつての二人がそうであったように、桜と夏生もまた、それぞれの過去に大きなわだかまりを残しており――
    読み手を強く惹きつけるこの作品の魅力は、やはり言葉運びの巧みさなのだと思う。
    感覚、人間関係、テーマ。どれもが「然るべき」というところにいてくれる。
    前作の時点でも作品の完成度に驚かされましたが、今回もまたそれ以上のものを感じました。

    書店関係者

  • 前作で新しく共に歩き始めた律子さんと燕が、今作で更に魅力的に描かれていてとても嬉しくなりました。
    律子さんの過去に触れる今作も、前作同様に文章から色が溢れるようでした。
    律子さんの筆から溢れる色や燕が作るお料理の色が目の前に描かれていくようでキラキラと美しいなと思いました。
    更に今回は、かつての教え子とその子供たちの葛藤や迷いを中心にストーリーが進み、
    彼らによる音楽が全編に絡まっているので、色と音に満ちたより鮮やかな印象だなと思います。
    桜と陽毬親子の蟠りが、桜が自分と向き合い寂しさに素直に気付くことで溶けてゆき、
    律子さんを中心に繋がる人々の輪に自分なりの『家族』を燕が見つけ出していくラストは、
    希望に満ちて笑顔に満ちて、読者の私まで笑顔になる素敵なラストでした。
    まさに『律子の黄色』がピッタリだと思います。
    律子さんと燕の物語が今後も読みたいと思いました。

    書店関係者

  • そこここに散りばめられるように鮮やかな色が見えるようだ。
    しかし、この作品は色彩だけではない。匂いも味も感じられる。
    描かれる料理が本当においしそうなのだ。
    さらに聴覚を刺激するようにピアノやヴァイオリンの奏でる音にあふれている。
    中でも最も印象的なのが”雨”の音。まるで映画のシーンが目前に展開されるように感じることができる。
    そういった小道具を上手く使いながら、様々な障害を乗り越え、
    様々な真実を明らかにし、切り離された”個”の関係性を再び紡ぎ”家族”という属性へ
    昇華していく様を描き切る筆力は見事。
    とても心地よい作品であった。

    レビュアー

  • カラフルなのに、ずっと切なさが漂う作品でした。
    確かに料理の美しさや、律子さんのチャーミングなキャラクターは魅力的です。
    でも燕くんだけでなく、律子さんにも秘密があって、それらが切なさを醸し出しているようでした。
    2人の秘密が明らかになった後、料理は匂いまで感じられました。
    色だけではなく、匂いや温度まで伝わってきたのは、幸せを感じられたからかもしれません。
    とても素敵な作品でした。

    メディア関係者

  • 絵を描くことを人生に捧げててきたにも関わらず
    絵が描けなくなった高齢の天才女流画家と美大生の青年が、
    食卓を二人で囲むことで孤独を癒し少しづつ前を向いて歩きだそうとする物語。
    季節ごとの色鮮やかな料理と共に描かれた心の交流は、
    ひやりとする場面もあるが、最後は読んでいて暖かい気持ちになった。
    読んでいてこんなにも、温度と色を感じる小説は初めてだったように思う。
    色彩豊かな文章がとてもきれいでおいしそうで、
    それだけでも読む価値がある小説でした。

    レビュアー

  • 絵を描けなくなり無気力に生きる美大生の燕と家事能力に欠けるかつて天才画家といわれた律子。
    偶然の出会いから料理の腕を見込まれ、燕は律子の居候となる。
    二人は絵と料理を通して交流しながら、それぞれの秘密に向き合っていく。
    鮮やかな色彩あふれる絵画描写と美味しそうな食事風景に心があたたまる。
    二人がそれぞれ自分と向き合い、心の傷を克服したあとのラストが爽やかな一冊。
    個人的には、子どものように無邪気なのに年相応の思慮深さと母性を感じさせる律子が魅力的だと感じた。

    書店関係者

書籍情報

極彩色の食卓 ホーム・スイート・ホーム

表紙
  • 著:みお
  • 装画:丹地陽子
  • 発売日:2025年6月20日
  • 価格:803円(本体730円+税10%)

極彩色の食卓 カルテットキッチン

表紙
  • 著:みお
  • 装画:丹地陽子
  • 発売日:2020年5月20日
  • 価格:770円(本体700円+税10%)

極彩色の食卓

表紙
  • 著:みお
  • 装画:丹地陽子
  • 発売日:2019年6月22日
  • 価格:770円(本体700円+税10%)

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