ことのは文庫

story

本作『ヨロヅノコトノハ』には、
百人一首などでおなじみの
素敵な「和歌」が多数登場します。

学校の教科書で見たことがあるけど、
あんまり「和歌」ってよくわからないな……という方や、
お正月の百人一首でしか触れたことがない、という方のために、
天音くんによる、とっても楽しい「和歌教室」の、
はじまりはじまり……。

そしてさらに!
そんな「和歌教室」が誕生した裏話が、
なんと、作者のいのうえ えい先生の手による
四コマ漫画で登場します!

天音先生のちょこっと和歌教室

  • 突然ですが、古の時を越えてきたくせにいまいちセンスに欠ける残念な妖のために、和歌教室を始めたいと思います

  • ん? なんか紹介にけっこうな棘を感じんねんけど、それってもしかしなくてもおれのこと?

  • 当たり前だろ。いきなり和歌を学びたいとか、相変わらず思考が謎なんだよ……

  • えー、だって、天音の『言霊』を咄嗟に跳ね返すのってけっこう難しいんやで。おれ、そもそもは戦闘に頭使うタイプじゃないんよな

  • あぁ、それはそうだな。よくわかるよ、うん

  • ……納得しすぎやろ。まぁとにかく、今後のためにちょっとは学んどこうかなと。それに天音の詠む和歌ってけっこうキレイやと思うんよな~。難しいのもあるけど

  • ……あっそ。和歌も、時代によって多少傾向が変わるからな。『小倉百人一首』の和歌は圧倒的に有名なものが多いけど、おれは『万葉集』の和歌も好きだな。すごく素朴で、飾らない。その分想いがストレートに伝わるっていうか、力強い歌風なんだ

  • へぇ。和歌って身分の高い奴らのもん、ってイメージが強かったけど、『万葉集』は農民の歌とかもあるねんな

  • そうだな。和歌は、もともと気持ちを伝えるための手段だから。特別な人たちだけのものじゃない。後々は技法や技巧を凝らすようにもなってくるけど、気持ちを伝えるためのっていうのは、どの時代も同じじゃないかな

  • あ、それで思い出したけど、あの『我を待つと 君が濡れけん あしひきの』って和歌、綺麗よな

  • ……おれがあれ詠んだとき、鬼の形相でキレてたくせに

  • それは天音が妖怪を誑かしまくったからやろ

  • んなことしてねーよ! 陽動だって何回言わす!

  • 天音が妖タラシなせいで、あんときはそれどころじゃなかったけどさ~。あの和歌って綺麗やけど、なんかあれだけで詠むと不完全じゃない?

  • ……だから、タラシてないってのに。そうそう、あれはな、『返歌』って言って、詠まれた歌への返事みたいなもんなんだ。ちなみに、石川郎女(いしかわのいらつめ)に歌を贈ったのは大津皇子(おおつのみこ)らしい

  • ふーん。どんな歌を贈ったん?

  • 『あしひきの山のしづくに妹(いも)待つと我立ちぬれぬ山のしづくに』。あなたを待って立ち続け、すっかり濡れてしまったよ、っていう意味だ

  • なるほど。山でずっと待ってたわけやな。……お、なんかこれ、おれと天音みたいやな

  • …………は?

  • おれも、最初に闘ったあと、天音が来るの山で待ってたんやで。けどおまえ全然来んしさ~。なんかわかるわぁ、その皇子の気持ち

  • 何ひとりで納得してんだよ……。だいたい、そんなしおらしく待ちぼうけてなかっただろ、おまえは。いきなりおれの高校に紛れ込んで、おれの度肝を抜いてくれたあの所業を忘れたとは言わせねぇぞ……

  • あれ、そうやったっけ? まぁそんだけ会いたかったってことや。皇子さんもちゃんと会いに行ったらよかったのにな

  • ……まぁ、返歌があるってことは少なくとも別にそれきりじゃなかったってことだろ

  • なるほど。ってあれ、天音なんか楽しそうやけど、どうかした?

  • …………っ! べつに! っていうかただの雑談だろこれ! 和歌覚えたいんなら百人一首やるから自分でやれ!

  • えー……ひとりで百人一首とかなんの罰ゲームなん……。あ、坊主めくりしようや、天音

  • しねーよ! 坊主の顔おぼえてどうすんだ! 和歌をおぼえろ!

  • じゃあ、天音が勝ったら今日の晩飯に卵焼きつけたるで

  • …………ぐぅ

表紙

ヨロヅノコトノハ
やまとうたと天邪鬼

  • 著:いのうえ えい
  • イラスト:沙月
  • 発売日:2021年7月20日
  • 価格:770円(本体700円+税10%)

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