第三きぼうビル 誰も主役じゃない日々

動画

ストーリー

地方都市の雑居ビルで働く、なんの共通点もない大人たち。
とりとめもなくオトナ気もない
彼らの集まるビルの名は
きぼう」である。

ここは、地方都市の裏路地にある3階建て雑居ビル『第三きぼうビル』。

1階には居酒屋
2階はフロアが二つに分かれていて、片方がベンチャー企業の事務所。もう片方が美容室
3階には探偵事務所がそれぞれ入っている。

もともとは「きぼうビル」「第二きぼうビル」が存在したが、先の二棟は取り壊され、現在残っているのはこの第三だけである。当然ながらエレベーターはない。ボロいビルである。

自称探偵のオーナー、
気まぐれな居酒屋の大将、
毒舌美容師の姐御、
ベンチャー企業のパリピ社長、
ダウナー系大学生のバイト。

ここで働くなんとも頼りない大人たち(計5名)が、
ささやかで強烈日常を繰り広げていくハートフル(?)な連作短編集。

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登場人物

3F

オーナー灰川 悟

Satoru Haikawa

  • ビルのオーナー。最上階で探偵事務所を構えている。だるっとしただらしない外見の中年男性。
  • いつ見ても暇そう。探偵は道楽で名乗っているだけで、収入は家賃。
  • 探偵に憧れを持っているが推理力は皆無。ビルの面々からは「ハムスター程度の推理力」と言われる。
  • 口癖は「待って、まだ言わないで、当てる」だが、まず当たらない。
  • オーナーなので一応リーダー格だが、さほど慕われているわけでもない。
  • 離婚した妻がいる。別れているが不仲ではなく、たまに奥さんが差し入れ片手に様子を見に来ている。

2F-A

ニエー前島 裕弥

Yuya Maejima

  • 23歳くらいの若手起業家で「2-Aに入ってるなんかの会社の奴」の略でニエーと呼ばれている。
  • 2階の左半分を事務所にして「企画・開発・マーケティング総合カンパニー」みたいな、何かはしているらしいが
    具体的に何をしているのかはよくわからない会社を経営するパリピ。彼自身、自分でも何の会社なのか説明できない。
  • しかし収入は安定しており、年に2、3回くらい会社の金で海外旅行へ。
  • お土産のセンスが壊滅的に悪い。
  • 口癖は「分かるうー」だが、基本わかっていない。ノリと勘だけで成功してきた。
  • よく喋るのに謎に包まれており、プライベートの情報がほぼない。

2F-B

姐御高槻 敬一

Keichi Takatsuki

  • 2階の右半分のフロアを店にしている口の悪い美容師。
  • 話し方が女性っぽいのであだ名が「姐御」だが、外見も自認も男性。
  • そこそこの腕前とそこそこの人当たりの良さでそこそこな美貌の持ち主だが「あら~廃棄直前の肉まんみたいでカワイイ」など独特な褒め方をするせいでリピーターがつかない。
  • 酔うとさらに口が悪くなる。
  • 元ヤンであり、若い頃は地元最強だった(オーナーだけは当時を知っている)が、本人にとっては黒歴史であり、その話をされると「黙りなさいおブス!」と怒る。
  • 現在も腕っぷしが強く、力加減ができない。

1F

大将塚本 ムツオ

Mutsuo Tsukamoto

  • 1階の居酒屋「きまぐれ亭」店主。オヤジ然とした風貌。
  • 多趣味。回を重ねるごとに店の装飾がギター、絵画、パズル、生け花と増え続けるがどれも長続きしない。
  • 職も転々としており、「俺が〇〇目指してた頃~」で話し始めるパターンが異様に多い。
  • 気まぐれなので店のメニューもしょっちゅう入れ替わる。
  • 「何事も経験が大事」と語る(オーナーから「継続も同じくらい大事」と諭されている)。
  • 中学生の娘の扱いに悩んでいる。

1F~3F

バイト広瀬 曇

Kumori Hirose

  • オーナーのスーツにコーヒーをかけてしまったため、弁償のために働くことになった大学生。
  • このビルの中では一番の新顔。
  • 主に1階の居酒屋で働くが、オーナー指示でビルの清掃をしたり、姐御から呼ばれて美容院の手伝いをしていることもある。
  • 猫背+前髪で目が隠れていてパッとしない。やる気と表情に乏しいダウナー系。
  • 特技は「元カノのモノマネ」。他の登場人物全員、元カノと面識がないのでわからないはずなのに「あ、そういう子いるね」と変に心当たりがある絶妙なラインのモノマネをする。
  • たまに「今のモノマネは別の元カノっす」と言う。

ビジュアルメイキング

個性激強なキャラクターが
織りなすこの物語の
ビジュアルをご担当くださったのは、
大人気イラストレーターのふすい先生!

事前にあますところなく
作品を読み込んでくださり、
圧倒的な情報量を
惜しみなく注ぎ込んだ、
インパクト大の装画は、
このようにしてできあがりました。

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レビュー

依頼人が来ない探偵のオーナー。
飽き性の居酒屋の大将。
居酒屋でバイトする大学生。
美容師の姐御。
若手起業家のニエーくん。
5人のわちゃわちゃ感がたまりません。

この5人ならこのビルでなくても、無人島に行っても、宇宙に行っても楽しく生き延びられそうです。
一つのことをコツコツと続けたり、仕事を真面目にしてお金を稼ぐというのも一つの価値観としてありだと思います。
でもこの5人は大人だからという枠組みにはまらず、それぞれのペースで生き生きとしています。彼らの自由なやり取りは、ふっと笑えて肩の力が抜けるように楽しめました。
大きな事件が起きるわけでもないのに、仕事も世代も性格も違う、5人が巻き起こす化学反応最高でした。
ちょっと疲れた日に読んだら心が和むような連作短編でした。

レビュアー

え、もう終わってしまうの?と思った。
このお話をずっと読んでいたかった。
ビルにいる人たちが、なんといっても魅力的なのだ。
個性が強すぎるのに……いや強すぎるからなのか……。
仕事は特別変わったものではないのが不思議だ。
特別大きな事件は起こらない。
小さな出来事を、みんながああでもないこうでもないと話しているのが、
ひたすら面白いのだ。
探偵のお手伝いでも、居酒屋の皿洗いでも、美容院の掃除でもいいから
このビルに潜入したいくらいだ。
読んでいると、じわじわと元気になる。
続編をぜひお願いします。

教育関係者

人生において、誰もが自分の世界では主役である。
だが、時に脇役にもなり得る。
それで良い。それが良い。
脇役がいるからこそ主役が引き立ち、主役がいるからこそ脇役が輝く瞬間も往々にしてあるのだから。

この作品は“脇役たちのスポットライト”的な物語である。
『第三きぼうビル』のテナントで勤める個性豊かな人々のなにげない日常やちょっとした出来事がユーモアたっぷりに描かれており、随所にある共感ポイントや“あるある”が、どこかくすぐったい気持ちにさせる。自分の身近で起き得ることであるので、感情移入が容易で没入性が高いのも魅力的なポイント。
なによりも、(小さなものは数あれど)大きな事件やトラブルは特に起きることなく終始淡々と進む為、決して構えることなく気楽に、おつまみ感覚で読めるのだ。これもある意味“脇役”っぽい。

雑草に水を与えればやがて花が咲くように、脇役に光を当てれば時には主役として輝く。
そこにある、確かな“希望”を感じた。

この先も彼らの未来が平和でありますように。
密かにそっと願いながら続編を期待しています。

レビュアー

第三きぼうビル 誰も主役じゃない日々

表紙
  • 著:植原翠
  • 装画:ふすい
  • 発売日:2026年9月24日
  • 価格:781円(本体710円+税10%)

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