吉祥寺うつわ処 漆芸家・棗芽清乃の事件手帖

ことのは文庫

あらすじ

研究用の貴重な美術品を割ったという、あらぬ疑いをかけられて
大学で浮いてしまった女子大生・花岬はなさき麻冬まふゆ
そんな失意の彼女が吉祥寺で出会った漆芸家・棗芽なつめ清乃きよの

「あなたには、あなたにとっての真実があるのでしょう、それを歪めてはいけません」

麻冬の事情を知り、そう語りかける清乃は
まるで見てきたかのようにその真相を解き明かしていくが、
彼女の力はそれだけではなかった――。

がけっぷち女子大生&美しき漆芸家が贈る、心温まる陶芸ミステリー

ムービー

キャラクター

  • 花岬はなさき麻冬まふゆ

    大学二年生。ボーイッシュでラフな格好を好むショートヘア女子。
    明るく純朴でどんなことにも前向きな性格。
     ある事件がきっかけで棗芽清乃と出会い、彼女が営む陶器店『木蓮陶房』でアルバイトをすることになる。
    お店ではSNSを使った広報などのマーケティング面で清乃を支える。
  • 棗芽なつめ清乃きよの

    吉祥寺の片隅にたたずむ陶器店『木蓮陶房』の店主。美しくもミステリアスな女性職人。
     壊れたうつわを〈金継ぎ〉で修繕することを生業としている。
    抜群の観察眼と持ち前の聡明さで、迷える人々の心の謎を紐解いていく。
     吉祥寺の片隅でひとりで店を切り盛りしているのには、深い理由があるようだが……?

書き下ろしSS

『吉祥寺たい焼き屋の謎』

「そうだ。たい焼き屋の行列に並んているとき、ふしぎな人を見かけたんですよ」
「ふしぎな人……ですか?」
「わたしのひとつ前に並んでいた男性客のことなんですけど。カスタード入りたい焼きを四匹注文して、合計金額の八百四十円を、すべて十円玉で払っていたんです」
「お財布の中から、十円玉を八十四枚取り出した――ということですよね?」
「正確には、お財布じゃなくて巾着袋から出してましたね。でも、それだけなら、疑問に思うこともなかったんですけど……」
「それだけではないと?」
「はい。店頭でお会計をしていた店長さんも、嬉々として受け取っていましたし」
「たい焼きを購入して、滞りなく金銭授受を終えた。では、ふしぎなことというのはその後に?」
「そうなんです! そのお客さん、焼き上がったたい焼きの入った袋を受け取る前に、漆塗りの重箱を店長さんに渡していたんです」
「漆塗りの重箱……ですか」

レビュー

  • シンプルに好きです! 好きが詰まりすぎてもはや苦しかったです…!
    女性二人の絆、謎解き、同棲、百合の香り…そして吉祥寺が舞台!
    まだまだ読んでいたいです。
    「金継ぎ」というなかなか馴染みのないお仕事をされている、優しくて綺麗なお姉さん、清乃さんに恋してしまいました!
    清乃さんの仕事への姿勢やモノへの想いが、とても優しくてかっこよかったです。
    そしてモノを継なぐだけではなく、麻冬と一緒に人と人とを繋ぐ物語に心が温かくなりました。
    ちょうど麻冬と同じ年のころに私も吉祥寺に通っていました。その頃の事を思い出して、懐かしくて眩しい気持ちになりました。
    清乃さんへの憧れと、私の思い出が詰まった1冊になりました!

    TSUTAYAサンリブ宗像店 渡部 知華 様

  • 美術品を壊したという疑いをかけられた女子大生。彼女が出会う漆芸家。
    その二人がお互いを思いやる気持ちが優しく読んでいると、とても心が温まる。
    漆芸家は欠けたりひびの入った陶器を「金継ぎ」で修復していくが、その技法はただ修復するだけではなく、その器の価値を高めることさえある。
    陶器のようにひびが入ってしまうことがある人間関係も「金継ぎ」のようにお互いの価値が高められるような修復ができたらと思った。

    レビュアー あおい 様

  • 麻冬と清乃さんの関係が単なる友情や信頼だけではなく、2人きりになると出てくる女性同士とは思えないくらい艶めかしい描写にドキドキしてしまいます。
    うつわを丁寧に繕いながら人と人の関係まで見事に繋いでしまう清乃さんと木蓮陶房で成長し清乃さんの右腕になっていく麻冬、どちらも頼もしく応援したい気持ちになりました。
    金継ぎについて今まで一度も見聞きしたことがなかったので、清乃さんが作業をする工程が興味深かったです。

    大同大学大同高等学校図書館員 藤原 朋美 様

表紙

吉祥寺うつわ処
漆芸家・棗芽清乃の事件手帖

  • 著:穂波晴野
  • 装画:丹地陽子
  • 発売日:2023年1月20日
  • 価格:781円(本体710円+税10%)

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