ことのは文庫

書棚の本と猫日和

あらすじ

流行に追われて自分を見失った美容師、訳あって本をお金に換えたい就活生、
人を知るために本を読み込むバーテンダー、作品を読まれることを恐れるアマチュア作家、
同居する孫と娘の不仲に心を悩ませる老婦人……。

新宿の片隅にある看板猫のいるシェア型書店『フレール』を舞台に巻き起こる
“棚主”たちの物語。

本との出会い、そしてそこから始まる人の縁が、
抱えていた悩みや苦労を知らず知らずのうちに浄化していく――。

読めば本への想いで満たされるシェア型書店エンターテインメント!

舞台紹介

シェア型書店〈frère(フレール)〉

新宿御苑前にある看板猫のいるシェア型書店。観光案内所も兼ねる。
新宿区出身、在住で街の案内できることが、棚主の条件。
街に長く住んでいる本好きの人たちが集まる。
フレールはフランス語で同志、兄弟、というような意味。


〈フレール〉のオーナー 桜井さくらいはるか

新宿生まれ、新宿育ち。
飲食店コンサルタントだが、自身でも飲食店経営をしながら、
観光相談所や書店の運営などを手がける。
事務所を〈フレール〉の二階に構え、日頃から棚主や客とも積極的に関わって、
人の縁を繋ぐ手伝いをしている。

動画

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登場人物

  • 春日井聡子

    新宿御苑前にある〈美容室blanc(ブラン)〉のトップスタイリスト。
    売上に対する責任を負いながら、
    後輩の指導をする忙しない日々を
    送っている。
    美容師になったばかりの頃に厳しい指導で
    心が追い詰められた経験から、
    人には優しくありたいと思っている。

  • 白根凛太郎

    〈猫のハンモック〉棚主。
    就職活動中の大学生。
    飼い猫ちよと一緒にときどき
    〈フレール〉の店番をしている。
    ふと気づくと書店にいる、というほどの本好きだが、訳あって自宅にある膨大な本を売ることにした。
    上手くいかない就職活動のせいで、自分に自信がなく、期待することさえも忘れている。

  • ちよ

    ぶち猫。見知らぬ場所、人を相手にして
    堂々としている。
    もともと凛太郎の家の近所を
    縄張りとするボス猫だった。
    足の怪我で弱っていたところを
    凛太郎に救われてから飼い猫となるが、
    懐かない。

  • すみ

    キジ白。悠が引き取った保護猫で
    〈フレール〉の看板猫、になるはずだったが、臆病でいつも棚の中に隠れてしまう。
    居場所がわかりにくいため、
    店にいるときには首に鈴をつけている。

  • 梶原啓一

    〈triple sec(トリプルセック)〉棚主。
    新宿ゴールデン街にあるショットバー〈十三月の庭〉の雇われマスターで、悠の友人。
    棚に置く本にはすべて手書きの
    感想を挟んでいる。

  • 二宮清花

    〈小夜曲〉棚主。
    筆名は小夜香。〈フレール〉には
    手製本の詩集を置いている。
    猫が苦手。他人と話をしている最中に
    考えごとに没頭するくせがある。

  • 石井恵美子

    〈ケノヒ〉棚主。娘、孫と同居中。
    仕事が忙しい娘に代わり、
    掃除、買い物、料理などをこなす。
    家族からは夢見がちだと思われている。

  • 石井瑞己

    恵美子の孫娘。勝気な性格の高校二年生。
    啓一に憧れて修学旅行で〈フレール〉を
    訪れる。

書き下ろしSS

『二度目の東京観光』

 繁華街の真ん中で、オレンジ色の髪の女性が右を向いたり左を向いたりと、忙しなくコートの裾を翻している。 時々はっとしたように動きを止め、また悩み出す。 その姿を横で眺めていた石井いしい瑞希みずきは、ポケットからスマホを出して、地図アプリを起動した。

 観光案内をするはずのガイドが、迷子になっているのだから仕方がない。最近行った場所だから大丈夫だと、自信たっぷりだったが、あれはなんだったのか。

「あの小夜香さやかさん、こっちの道みたいですよ」



レビュー

  • シェア型書店「フレール」に関わる人たちの視点が章ごとに変わるのがその人それぞれの想いが強く伝わってきて良かったです。
    新宿で購入した本が遠方の思いもよらぬ人の気持ちを動かす、そんな素敵な波及効果に心が温まりました。そのきっかけとなったのが、本そのものではなくて感想を書いた人からの繋がりというのが面白かったです。
    感想というものはここまで誰かに影響を与えるのか、と感心しました。
    その作品のへの思いを共有できたり違う視点の読み方を発見したり、確かに感想までフルセットでその作品を堪能すると充足感はすごいです。
    この書店のご縁を繋ぐもう一つは猫。そこにいるだけで癒やされますね。
    ここから繋がるわくわくするような希望のご縁。こういうのを幸いというのかと微笑ましく読了しました。

    書店関係者

  • 新宿の片隅にあるシェア型書店「フレール」。
    看板猫のいる「フレール」は本だけでなく、人と人を繋ぎその輪の思わぬ広がりに心がとても温かくなりました。
    最近シェア型書店増えていますね。
    私も何度か行ったことがあるのですが、棚主さんのこの本が好きという思いが込められて並べられていて、棚主さんごとの個性を感じとても素敵な空間だなと思います。

    レビュアー

  • 最近流行のシェア型書店がテーマの小説は初めて読みました。
    私にもシェア型書店の経験があり、非常に関心の持てた内容で、それぞれの棚主がどのような思いで置く本を選んでいるのか、読んでいて目から鱗でした。
    ただ本を読み終えて良かった、感動したに止まらず、その本を読んだ思いを新しい読者につなげていくシェア型書店特有の面白さを存分に味わえました。
    また、SNSでは得られない棚主や他の本好きのお客さんとの直接の交流にも憧れを感じました。
    読めばきっとシェア型書店に挑戦してみたくなるし、既に棚主の経験がある人も参考になるポイントが見つかる内容ではないかと思いました。

    レビュアー

書籍情報

書棚の本と猫日和

表紙
  • 著:佐鳥理
  • 装画:わみず
  • 発売日:2024年10月19日
  • 価格:781円(本体710円+税10%)

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