人々の感情が色で見える特異な体質のせいで人生に嫌気が差していた明日菜あすなは、
ある日理不尽なリストラに遭ってしまう。

途方に暮れ、行きついた先で目にしたのは、「従業員急募」という張り紙。

そこは、店主の柘植つげと言葉を話す猫・うたが営む、
魂が宿った人形の最期を見届ける「無幻堂むげんどう」というお店。

ひょんなことから「無幻堂」で働くことになった明日菜は、
人形たちの感情を読み取り、怒りや悲しみを汲み取っていく。

行き場を失った人形たちの最期に寄り添う、
儚くもあたたかいハートフル・ドール・ストーリー

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  • 夏原なつはら明日菜あすな

    生まれつき人の感情が色で目に見える特殊能力も持つ。
    性格は前向きでいじっぱり、頑張り屋さんで天然なところも。思っていることが顔にすぐ出る。
    入社2年で突然会社からリストラされ、途方にくれている時に偶然「無幻堂むげんどう」にたどり着く。

  • 柘植つげ悠真ゆうしん

    34歳。京都の古民家「無幻堂」にて、各地方から送られてくる人形の魂を送る【送魂そうこん】を生業としている。
    ある日求人募集の貼り紙を見て来たという明日菜と出会う。ぶっきらぼうだが情に熱く、一度内側に入れた人は大事にする。

  • うた

    「無幻堂」で柘植とともに送魂を手伝っている猫又。
    人の言葉を喋るが、雄なのになぜかお姉さん口調。
    世話焼きで柘植と明日菜を親目線で見守る。

  • 柘植つげ律真りっしん

    悠真の兄。送魂を依頼しによく「無幻堂」を訪れる。
    派手な見た目だが、気さくで話しやすく、明日菜たちを気にかけてくれている。

『僕とぼくの想いが重なる鴨川のほとりで』

 それはある日の午後のことだった。お昼休みになったので、ランチを食べに外に出て無幻堂に戻ろうとしていたとき、四条大橋の橋の上から鴨川沿いにいる男の子の姿が見えた。
 平日のこの時間に、子どもがひとりでいるのは珍しい。幼稚園児……であれば、親と一緒だろうから小学生?
 妙にその子が気にかかったのは、腕に抱えるサイズのクマのぬいぐるみを持っていたから。それから、悲しみの青に包まれていたから。
 迷子であれば、ちょうどそこに交番があるから連れて行ってあげた方がいいかもしれない。私は少し先の階段から川の方へと降りると、男の子に話しかけようとした。けれど。

  • 強引に人形に話し掛けるのではなく、人形の気持ちに寄り添ってあげる会話ができる明日菜ちゃんは優しいです。
    魂があるから人形はその想いを誰かに受け止めて欲しいのですね。
    京都の喧騒が聴こえてきそうな街中の風景、それぞれの個性が強い柘植三兄弟、先輩猫の詩さん、 美味しそうな甘味、どの情景も身近に感じられてほっこりします。人形の最後の想いを聞き届ける、温かいお話でした。

    書店関係者

  • 大切に想う気持ちが何よりも尊くて温かい!
    子供の頃に大切にして、一緒に遊んだ人形、大きくなるにつれ、段々と遊ばなくなる。
    だけどこの作品はその人形のことを、一緒に遊んだ楽しかった感情を思い出させてくれます。
    人形も人も、大事にされ、大切に想うことがどれだけ素敵なことかを教えてくれる作品でした。

    レビュアー

  • 懐かしさと切なさで胸がきゅうっとなりっぱなし。
    私も子供の頃に大事にしていたぬいぐるみを思い出し、大好きだよ、という温かい気持ちが蘇りました。
    大好きな京都が舞台となっていて、美味しそうなスイーツも気になるものばかり。何より柘植さんと 明日菜の関係も気になるので、ぜひとも続編をお願いします!人形達の儚いエピソードももっと見たいです!

    書店関係者

  • 喜び、悲しみ、怒り、憎しみ……様々な感情を抱えたまま、 やがて訪れる最期のときに人形たちが語る想いにほんの少し耳を傾けてみてください。
    そして今、もしも大切にしている人形があるなら、 そこにはきっと魂が宿り、貴方にそっと語りかけているかもしれません。

    レビュアー

京都「無幻堂」でお別れを 大切な人形の魂を送る処

表紙
  • 著:望月くらげ
  • 装画:チェリ子
  • 発売日:2024年1月19日
  • 価格:792円(本体720円+税10%)

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