マイクロマガジン社

夏の匂いがする 木爾チレン 写真・岩倉しおり イラスト:有村佳奈 夏の匂いがする 木爾チレン 写真・岩倉しおり イラスト:有村佳奈 夏の匂いがする 木爾チレン 写真・岩倉しおり イラスト:有村佳奈 夏の匂いがする 木爾チレン 写真・岩倉しおり イラスト:有村佳奈

ずっと私たち二人だけの美しい世界が続けばいい。

かつて少女だった彼女たちの、 恋とも友情とも言えない同性に強く焦がれる気持ちを描いた、ひと夏の物語――。

話題作『みんな蛍を殺したかった』『二人一組になってください』の著者が贈る、
R-18文学賞優秀賞を含む初期短編五篇を収録した作品集!

著:木爾チレン (きな・ちれん)Chiren Kina


写真:篠部雅貴
短編小説『溶けたらしぼんだ。』で第9回『女による女のためのR-18文学賞』優秀賞を受賞し、
2012年『静電気と、未夜子の無意識。』(幻冬舎)で単行本デビュー。
その後、少女の心の機微を大切に、多岐にわたるジャンルで執筆。
2024年『二人一組になってください』(双葉社)が大ヒット。
他の作品に『みんな蛍を殺したかった』(二見書房)『神に愛されていた』(実業之日本社)等がある。

写真:岩倉しおり (いわくら・しおり)Shiori Iwakura

香川県出身。写真家。
おもにフィルムカメラを中心に自然や人物を切り取る。
自身のインスタグラムはフォロワー数が21万人を超えるほどの人気。
CDジャケットや書籍のカバー、広告写真などを手掛ける。

イラスト:有村佳奈 (ありむら・かな)Kana Arimura

鹿児島出身。画家。
ウサギの仮面をつけた女性をモチーフにした絵を描き『現代を生きる乙女』の表現に取り組む。
近年、パリ・台北と国内外で展覧会を行い、活躍の幅を広げている。
装画や広告のイラストも手掛ける。

初出

  • 瑠璃色を着ていた

    平成二十年未発表作品(令和五年 改稿)

    瑠璃色を着ていた

    「後輩の少女は泣いていて、
    私はその感情に満ちた横顔をきれいだと思った。
    十八歳の私たちにはない、十七歳の美しさがあった。」
  • 植物姉妹

    平成三十年未発表作品(令和三年 文学フリマで販売)

    植物姉妹

    「ねえ白、人はみんな、半分で生まれてくるのかもしれない。
    そしてその半分を、必死で埋めようとしている。」
  • りかちゃんといづみちゃん

    平成二十三年未発表作品(令和五年 改稿)

    りかちゃんといづみちゃん

    「二人で食事に行くとするよね。
    そしたら、二人で同じものを食べなきゃだめ、絶対にね」
  • 溶けたらしぼんだ

    小説新潮 平成二十二年六月号(令和五年 改稿)

    溶けたらしぼんだ

    「誰かと誰かが恋をして、誰かと誰かが愛し合うようになり、
    誰かと誰かの子供が生まれて、
    誰かと誰かの子供が、誰かと愛し合った後のような、
    そういう短く、長い生命のつながり。」
  • 夏の匂いがする

    平成二十四年未発表作品(令和五年 改稿)

    夏の匂いがする

    「「ねえゆり、夏の匂いがする」
     栞があたしの髪に鼻孔を寄せ、透き通るような声で言った。」

『夏の匂いがする』イラスト集

本紙では、章扉や目次、表紙などに有村佳奈さんの素敵なイラストを掲載しています。
ここではそのイラストたちの別バージョンを特別に大公開!
有村佳奈さんの繊細なタッチとともにお楽しみください。

レビュー

  • 胸が苦しくなるような甘酸っぱい気持ちや、新鮮なまま保存された少女の煌めきが美しく表現されている。
    今まさに少女の時を過ごしている人には、刺激的で、心が自由に解き放たれて、支えとなる1冊。
    もう大人になった私は、懐かしい錯覚に色んな思いが重なり、心の動きや揺らぎが丁寧に描かれている1ページ1ページを、大切にかみしめた。
    人生を共に歩める、希望のかたまりのような作品だ。

    書店関係者

  • 少女から大人への輝かしい時代の彼女たちはふんわりと現実味が無いような夏の残像を見てるような感じなのに脆くてガラスみたいな剥き出しの感性は五感を刺激して心に刺さりました。
    金魚鉢の中をふわりとたゆたうような二匹の美しい金魚を眺めているような気分になりました。二匹だけの世界がありながら餌をもらうときは人の存在が有り、それもまたこの二匹の現実世界で。ただただ美しく泳ぐ姿だけでなく、生理現象は生々しく発生する。
    短編の間にその作品の書かれた心境を語られていて、それが作品の魅了を深めてていいな、と思いました。

    書店関係者

  • 目を閉じたらいつもそこに浮かんでくる、未完成な少女時代の夏の焦燥を惜しげなく描いた、耽美的な初期作品集。
    憧れ、恋、愛―――同性間のまだ名前も付けられないような曖昧な感情が、生まれては流動していく。その貴重な一瞬一瞬をとらえて解き放つ、身を削る芸術のような5つの短編集。
    眩しいほど色鮮やかで、それぞれから音やニオイや温度も感じられ、繊細さと大胆さの共存がとても心地好かった。
    ちっぽけな世界を自分たちで広げてやったような錯覚や、そのくせ変化に怯える矛盾だったりを、痛みをともないながら曝けて受け入れあっていく。優しさの定義や、悲しみの乗り越え方など、独自の視点で先へと促してくれる「植物姉妹」に一番心を掴まれた。
    「ラメ入りの声」など、天性のセンスが光る表現が作品とマッチしているのもめちゃくちゃエモい。
    R-18受賞作は官能的な要素を残したままマイルドなタッチになっていて、オリジナルと読み比べてみるのも面白い。
    すべてに著者の解説があり、作品を自分なりに感じ、解説を読み、そしてもう一度新しく感じる事が出来るのも魅力。

    教育関係者

  • 大人になる前の少女の不安定な気持ちが、とてもうまく表現されていた。
    最初の『瑠璃色を着ていた』を読んだ時点で、一気に感性が十代に戻されてしまった。
    もう戻れないあのころが、夏の終わりの一抹の寂しさとシンクロしていて、とにかく切なく、悲しく、でも美しかった。
    わけもなく笑ったり、泣いたりしていたあの頃のように、知らない間に涙が頬を伝っていた。
    各作品の後に、著者の解説があるのもよかった。

    レビュアー

夏の匂いがする

夏の匂いがする

著:木爾チレン
写真:岩倉しおり
イラスト:有村佳奈
2024年12月20日発売
価格:1,815円(本体1,650円+税10%)

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